今回は人間関係における「割れ窓理論」について考えていきます。よろしくお願いします。
割れ窓理論とは
割れ窓理論とは、破れた窓ガラスをそのまま放置すると、周りの環境も荒れていくという現象を表した理論です。
名前の通り、窓が割れているのはもちろん、建物の一部が破損したまま放置されている、ゴミで散らかっている場所があったとします。その周辺には落書き、不法投棄が起こりやすいということです。
汚れや破損を片付けず放置することで「ここは散らかして良い場所」と勝手に認識されてしまい、どんどん荒らされていってしまいます。人間は荒れた環境を見ると「もっと荒らしてもいい」と無意識に思ってしまうからです。
エスカレートしていくと、周囲の治安も悪くなり、やがては凶悪犯罪の温床になってしまう場合もあります。
割れ窓理論は人間関係にも応用できる
割れ窓理論は人間関係にも応用することができます。学校や職場、家族間でも、小さな問題やトラブルを見逃し、そのままにしておくと、関係は悪化していくということです。ほんの小さな誤解や不満でも、解決せずに積み重なると、いつの間にか大きな対立になってしまうことはありますよね。
割れ窓理論と対人トラブル
割れ窓理論は、対人トラブルの原因の一つと言ってもいいと思います。問題やトラブルが小さい内に対処しないと、周りの人は不信感や不満を溜め込み、最終的に人間関係そのものが壊れることもあるでしょう。
人付き合いにも割れ窓理論を意識しておくことで、小さな問題や不満を早期に解決することができると思います。
人付き合いにおける「割れ窓」について
ここからは人付き合い、特に職場における「割れ窓」という状態を考えていきます。
違和感が我慢すべきものとして放置される
職場で違和感や不便さを感じたとしても「我慢すべきもの」として放置されることがあります。これが割れ窓理論における割れた窓ガラスという状態です。
社員達の意見が通りにくい環境だと、彼らの感じた小さな違和感や不便さなどは放置されてしまいます。不満を抑え込んでいるので、職場の雰囲気は荒み、そこにいる人々の余裕もなくなっていくでしょう。
やりづらさを感じストレスを溜め込む
違和感や不便さを放置すると、従業員は仕事のやりづらさ、改善されない効率の悪さにストレスを溜め込みます。すると、ストレスが原因で効率がさらに下がる、従業員が体調を崩しやすくなり休む、退職するといった事態になる可能性が高いです。
温和な人や能力が高い人から去っていく
職場環境が改善されず、人間関係もギスギスしだすと、今度は前向きな人、温和な人、問題解決能力が高い人などの職場環境の改善に重要なメンバーが職場を去っていきます。
「これ以上ここにいても改善されない、搾取されるだけ」「利益もないのに緩衝材、ケア役にされたくない」なら、自分に負担が来る前に、本格的なトラブルに巻き込まれる前に離れたほうがいいですよね。
必然的に、職場には責任感、使命感で動けなくなっている人、他に行き場がない人、要領の悪い人が残されます。残された人で無理に仕事を回しても、元の環境が悪いので状況は改善しません。
それどころか、「みんなつらいんだから一緒に我慢しよう」と、負の方向で団結を求めるようになり、他者へ干渉的、攻撃的な人と、攻撃的な人に便乗する取り巻きが出てきたりして、さらに場の空気を悪くなることもあります。人付き合い苦手だと、かなり居心地が悪い環境です。
人が減ったことで忙しくなり心の余裕がなくなっていく
職場で人が減ると、残された人達の手間が増えて忙しくなります。劣悪な環境と風通しの悪い人間関係でますます心の余裕がなくなり、空気はギスギスしていきます。
こういうタイミングで、新人として加わると最悪なんですよね。仕事にも職場の空気にも慣れていない新人は、格好の的として集中砲火されます。でもこういう所に限ってすぐにでも人がほしいので、求人アピールがすごかったりするような気がしました。
さらにイライラしている人が増えて険悪な空気が出来上がっていく
ここまで来ると辞めたくても辞めにくい、簡単に退職を切り出しにくい状況だと思います。特に義理堅い人、他に行き場がない人にとってはつらいですよね。人付き合いが苦手な人も同様です。
勇気を出してやめたいと伝えても「今の状況で?ふざけんな」「お前だけ楽にさせるか」といった攻撃的な対応になるか、鬱陶しく引き止められるかのどちらかでしょう。
辞めるまでの期間感じ悪い場に居続けるのも結構しんどいですよね。どうしても無理そうなら、退職代行を使って逃げる手もありでしょう。
立場が弱い人へのいじめや虐待が起こる
職場環境がさらに悪くなると、ミスが多い人、新入り、前から馴染めていなかった人が憂さ晴らしのターゲットにされやすいです。この他にも気が弱そう、個性的、自分たちのようにいじめに加わらない人も狙われるリスクがあります。人付き合い苦手な人にはますますハイリスクな環境となっていきます。
辞めたくても辞めにくいように妨害される、一方的に仕事や責任を押し付けるなど、かなり強引に辞めないと脱出が難しいケースもあるかもしれません。
また、職員同士に留まらずサービスの利用者へ矛先が向くこともあります。身体的にも社会的にも弱い立場となりやすい利用者の中には、身内がいない、いても関わりが薄いなど、外に頼ることができない人もいます。すると、職員に加害されても逃げ道がありません。一番最悪の事態です。
管理者もトラブルに対応する余裕がないため加害がエスカレートしていく
管理者が従業員の加害に気付いても、対応する余裕がないと止められません。それどころか、八つ当たり先があれば辞めないでいてもらえるかもと放置することもありえます。こうなると、ますます加害がエスカレートして、いずれ大きな事件に発展することになるでしょう。
今いる環境を「割れ窓」にしないためにできること
今いる環境を「割れ窓」にしないためには、以下のようなことが大切です。
ゴミや汚れを放置しない
まず、ゴミや汚れを放置しないようにします。割れ窓理論は、破れた窓ガラスがそのまま放置されると、周辺の建物は荒れていくということを示しています。同様に、ゴミや汚れがそのままに放置されると、その周辺はより汚れが目立つようになり、その場の雰囲気が悪化するでしょう。
体調が悪くて動けない、どう頑張っても気力が出ない時は無理しないほうがいいけれど、なるべくゴミや汚れが少しのうちから片付けていくしかないと思います。
日頃から過ごしやすさを考える
日頃から自分の過ごしやすさを考えることも大切です。勉強、仕事、睡眠、趣味など、今の自分が一番重視していることに合った環境を作るといいと思います。
例えば、勉強や仕事なら照明を明るくしたり、机や椅子の位置、高さ、背もたれなどを調整することで、快適な作業環境を作ることができます。
睡眠なら枕の硬さや高さ、寝具の触り心地、部屋の明るさ、ベッドの位置などを変えてみるのもおすすめです。
ストレスや不便を感じたら早めに対応する
ストレスや不便さを感じたら早めに対処すしましょう。特に人付き合いが苦手な人は、違和感を覚えたらなにがストレスになるのか、どこが不便なのかなど、原因を探る癖をつけたほうがいいです。小さな問題や違和感を解決、解消しようと考えることで、自分や周りを守ることにつながります。早めに察知すると、逃げにくくなる前に脱出することもできます。
自分が「割れ窓」状態になったときの対処法
割れ窓理論を人付き合いに当てはめて考えてみました。ここからは、自分が「割れ窓」状態になってしまった場合について、書いていきます。
誰でもネガティブになってしまうことはあるし、本人に自覚がなくても、周りから見て「良くない状態」に見えることもあると思います。
私は学生の頃、人付き合いが苦手かつ弱そうな外見、要領が悪かったことで、何度か加害を受けたことがありますが、加害者グループからしたら私は「汚れて割れている窓」だから「もっと壊していい」ものだと見えていたのかもしれません。
つらいことが連続して気力が出ないとき、自尊心が持てない状態のとき、いつの間にか自分が「割れ窓」状態になってしまう。そんなとき、自分を守る、加害を最小限に防ぐための対処法を考えてみます。
身だしなみを整える
まずは、身だしなみを整えることが大切です。ありきたりですが、結局は「清潔にしているかどうか」で人からの扱いは変わってきます。
服が汚れている、フケが出ているなど、清潔感がないと周囲からの印象も悪くなってしまいます。身だしなみを整え、清潔にしておくことで、他人から傷つく対応をされることも減り、自分自身の自信も回復することができます。
身だしなみの基準が人によって変わることもある
ただ、場所や相手によってはこの「清潔感」のハードルが上がる場合もあります。例えば、洗濯した服を着て毎日入浴して、歯磨き口臭対策していても、歯並びが完璧ではない、脱毛してない、骨格や顔立ちに合う服装をしてないなどの理由で、これら全部クリアしている人より雑な扱いを受けることはあるでしょう。
最近はどこまでが身だしなみで、どこからがルッキズム的なものなのか、わかりにくいので私もよく混乱します。私自身肌が弱く、カミソリ負けして炎症を起こしたことで、夏場ムダ毛を剃れなかったことがありました。そしてそれを見た同級生に嫌な態度を取られたことがあります。
いくら身だしなみを整えたつもりでいても、場所や関わる相手によっては、雑な扱いをされてしまうかもしれませんが、こういう場合は真に受けなくてもいいと思います。簡単に変えられないもの、変えるとしたらお金も時間もかかるもの、例えば生まれつきの体質や骨格などについて「清潔感」や「身だしなみ」と絡めてネガティブな言及をされたなら、そういう場や相手とは距離を置くのが一番いいです。
こっちの自尊心を削ってくる存在に、お金や時間を使うのはもったいないです。自分を見下してくる人に好かれる必要はありません。彼らの養分になるより、自分が心地よく過ごせる場所を探しましょう。
他人の前で自分を卑下しない
他人の前で自分を卑下することは避けましょう。「この人は雑に扱っていいんだ」と軽く見られてしまいますし、周りからの信頼も失ってしまいます。自分の弱さを認められるのはすごいことですが、人前、特に対して親しくない人がいる場所ではやめたほうが無難です。特に人付き合いが苦手な人は、リアルな場で必要以上にネガティブに振る舞うのはやめて、自分を大切にすることに集中しましょう。
調子が悪いときは人から離れる
最後に、調子が悪いときは人から離れるのも手です。特に人付き合いが苦手な場合は、誰かといても不満や疲れを解消できません。ストレスがたまってきたら、一人でゆっくり休み、自分自身をリセットする時間をとるといいと思います。
「割れ窓」状態に早く気付こう
実際の割れ窓はもちろん、人間関係の「割れ窓」状態を放置するのも危険です。また、自分が「割れ窓」にならないよう、なるべく早く気付いて対策しましょう。
とはいえ、これからは人間の場合、建物よりも「割れ窓」判定されるハードルは上がっていきそうな気がします。多数派、権力がわが好む見た目になれなかったり、稼ぐ能力が規定より低かったり、老化で衰えて動けなくなったりしたら、攻撃対象として「割れ窓」扱いされるかも、と思いました。
それならいっそのこと、必ずしも人間と長時間関わらなくても支障がなく、それぞれが快適に過ごせる社会になってほしいです…。それかリアルで人と関わらないといけないとき、アバターを使えるようになれば、第一印象でなめられたり、嫌な絡み方をされたりすることも減りそうだなと思いました。
では、最後まで読んでいただきありがとうございました!